大判例

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神戸地方裁判所 昭和25年(行)25号 判決

原告 石橋鉄太郎 外二十九名

被告 兵庫県知事

一、主  文

被告が昭和二五年一月一七日附で、原告らに対してなした別紙目録記載の農地の賣渡通知書交付処分を取消す旨の処分はこれを取消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

二、事  実

原告らは、主文第一、二項同旨の判決を求め、その請求原因として原告らは、自作農創設特別措置法に基いて、昭和二三年一二月、それぞれ別紙目録記載の農地の賣渡を受けたものであるが、被告は、昭和二五年一月一七日附農地賣渡通知書交付取消の件と称する書面を以つて、原告らに対し、「同二四年一二月二七日開催の兵庫縣農地委員会において、原告らに対する別紙目録記載の農地の賣渡計画の承認が取消されたから、賣渡通知書交付処分を取消す」旨通知して來た(原告らは昭和二五年三月二九日右書面を受取つた)しかしながら、右取消処分は、何ら正当の理由なく、既に賣渡処分により取得した原告らの所有権を失わせるものであるから、違法であること勿論である。そこで、これが取消を求めるため、本訴に及んだ、と述べ、被告の答弁に対し被告が昭和二四年六月二七日自作農創設特別措置法施行規則第七條の二の三に基き五年同賣渡を保留し得る農地として本件農地を指定したことは認めるが、既に賣渡処分を完了して原告らの所有になつた本件農地に対する右指定は当然無効であるから、かかる無効の指定に基いてなした被告の本件取消処分も、また違法たるを免れない、と述べた。

被告は、原告らの請求はこれを棄却する、訴訟費用は原告らの負担とする、との判決を求め、答弁として、被告が、原告主張の頃、原告主張の賣渡通知書交付処分を取消したことは認めるが、右取消処分は、何等瑕疵がない。すなわち、伊丹市伊丹地区農地委員会は昭和二四年九月一五日、原告らに対する賣渡計画を取消し、更に兵庫縣農地委員会は、右賣渡計画に対する承認を取消したので、形式的審査権を有するに過ぎない被告は、その取消について実質的審査することを得ず、さきになした賣渡通知書交付処分を取消さざるを得なかつたのである。仮りにそうでないとするも、被告は、昭和二四年六月二七日自作農創設特別措置法施行規則第七條の二の三に基き五年間賣渡を保留し得る農地として本件農地を指定したのであるから本件賣渡通知書交付処分を取消すことは、即ち違法ではない。以上の理由で、原告らの請求には應じ得ない、と述べた。

三、理  由

被告が原告ら主張の通り、本件農地につき原告らに対する賣渡通知書交付処分を取消したことは、当事者間に爭がない。

被告は、農地賣渡処分については、形式的審査権しかないから、伊丹市伊丹地区農地委員会において原告らに対する賣渡計画を、兵庫縣農地委員会においてその承認をそれぞれ取消した以上、被告のなした前記取消処分は何ら違法でないと主張するが、農地調整法第一五條の二八によれば、都道府縣知事は、都道府縣農地委員会又は市町村農地委員会の議決が法令に違反し、又は著しく不当であると認めたときは理由を示して再議に付し、これを是正させる権限を有することが明かであるから、知事が右権限の適正な行使を誤つた結果内容の違法な市町村農地委員会又は都道府縣農地委員会の議決に基いて農地買收又は賣渡に関する処分をなせば、その違法であることは言うまでもないところで、当事者は農地委員会の処分に対する不服を申立てなかつたとしても、更にこれに基く知事の処分の取消訴訟においてその違法を攻撃し得るものと解するのが相当である。(最高裁判所昭和二四年(オ)第四二号同二五年九月一五日言渡判決参照)、そこで、本件についてこれを考えるに、伊丹市伊丹地区農地委員会において原告らに対する賣渡計画を、兵庫縣農地委員会において、その承認をそれぞれ取消したとしても、元來、賣渡手続が、知事の賣渡通知書の交付を経てその完結をみた後において、その手続の前段階をなす賣渡計画又はその承認を取消すこと自体、他により重要な公益上の必要等特別の事情がない限り、手続の安定性及びその経済に反し、法の認めないところであり、かゝる違法な取消のあつたことを理由としてなした被告の本件取消処分は違法であると解すべきであるか、その点を措いても、たゞ賣渡計画及びその承認の取消があつたという形式的理由により、被告の右処分を適法視し得ないこと前記説明から明白である。すなわち、被告は、本件処分をもつて、その内容について実質的審査を遂げた上なした被告事件の取消処分として、その有効なる理由を主張立証しなければならないのである。從つて、被告の前記主張は到底採用し得ない。

次に、被告は、昭和二四年六月二七日自作農創設特別措置法施行規則第七條の二の三に基き五年同賣渡を保留し得る農地として本件農地を指定したから、原告らに対するその賣渡通知書交付処分を取消すことは、何ら違法でないと主張し、右事実は原告らの認めるところであるが、この事実によれば、被告のなした指定行爲は、既に賣渡処分により原告らの所有に移り国の所有に属しない農地を対象とするものであるから、法律上不能を内容とするものであつて、本來無効な処分であると解するのを相当とする。(当裁判所昭和二十五年(行)第二〇号指定取消、並びに同年(行)第五〇号五年同指定取消請求併合事件、同年一二月二八日言渡判決参照)從つて、かかる無効な指定に基いてなした被告の本件取消処分は、また違法たるを兎れないから、被告の前記主張もまた採用し得ない。

以上の理由により、原告らの請求はすべて正当としてこれを認容し、訴訟費用は民事訴訟法第八九條により被告の負担とし、主文の通り判決する。

(裁判官 古川靜夫 谷賢次 保津寛)

(目録省略)

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